チームの駅名を考える

今年の文化祭では、各チームがオリジナルの「駅名」を考えて、出し物をします。

「我々二次元チームがつくる駅、どんな名前にしようか?」

教員の問いかけに対して、机を向かい合わせて5人のメンバーが頭を悩ませている。駅の名前を実在のものではなく架空のものにするとクラスの中で決まり、どんな駅名をつけるのか「探す」のではなく「考える」ことになり、どんな駅名にしたらいいか思考していく必要が出てきたからだ。

一人ひとりにとりあえずアイデアを出してもらう。アニヲタ駅、カートゥーン駅、二次元駅、コミケ駅、自分たちのヲタクに関わる様々な単語が飛び交った。だが聞いている側は「なるほど」と「うーん…」が入り混じった表情をしている。内容はあっているが、いまいちだなあ、そんな表情でアイデアだけが出されていった。

そんな中、Y君が駅名としてはありきたりそうな、だがこの会議の中ではどこか一風違う駅名を出してきた。

「虹原駅ってのはどうでしょうか?」

自分もメンバーの頭の上に浮かんだのは「?」のマークだった。だがわけが分からないという顔をしているものはいない。皆がその駅名について説明を求めたがった。

「ええと、まずこの名前は読み方を変えると“二次元”と読めて…」

 駅名に込めた理由、想いをY君が語ってくれた。二次元と読み方をかけたこと、色々なヲタク(自分が極めたいこと)をそれぞれが持ち寄ってカラフルな虹のような景色を作りたいこと、きっと前から温めていたのであろうその場の思い付きではない思いを語ってくれた。聞いていくうちに他のメンバーも「?」が「!」に変わっていくのが見えるようだった。

 皆が駅名の説明を聞きながら、自分はこっそりとパソコンを操作した。

「虹原(にじげん)駅」、検索…。

全く同じ名前の駅は存在しなかった。虹原駅は架空の駅であるという条件を満たしていた。この駅名で行こう、メンバーの皆の目もそう言っている。五里霧中の道のりに、灯台の明かりが見えた瞬間だった。

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