(以下に登場する学生は全て仮名です)
腰の脇で拳を握り締め、上半身を反らしながら声を出す足立君。体は小刻みに震え、額には汗がにじんでいます。
教室の最前列で、教室の空気を震わせるような声をだす足立君。その姿をみて、周りの学生たちも自然と勢いづきます。
翔和学園大学部の朝は、名文の音読や歌を歌うことから始まります。
前日までの足立君は、歌の時間になると教室の後ろの方に固まって声を出せないでいる後輩たちの側にいました。後輩たちの背中を押して、教室の前に連れて行こうとしていたのです。
毎日毎日それを繰り返しても、後輩たちはなかなか前に出て行きません。そして、声も出せません。
そんな日々を繰り返していたある日、足立君自身が最前列に立ち、全力で歌い始めたのです。
翔和学園大学部の学生に求めるリーダーシップは、「俺がやる!」「私がやる!」という一言に尽きます。誰かを注意したり指示を出したりすることではなく、周りを奮い立たせるほどにまずは自分が力を出すこと。それが、翔和学園大学部のリーダーシップです。
そして、そんなリーダシップを示せることこそが、「翔和学園大学部の先輩」である証です。
こんな出来事もありました。
体験入学で武術の授業に参加した大田さんが、「ちょっと具合が悪い」と言って椅子に座って見学をしていました。その隣に大学部の渋谷さんが座りました。
渋谷さんは「できることを一緒にやろう」と体験生の大田さんに声をかけました。そして、渋谷さんは椅子に座りながら上半身だけを動かし武術の活動を始めました。それを見た大田さんが一緒に上半身の突きを始めました。
実は、渋谷さん自身も初めは「足が痛い」と言って武術の授業を見学していたのです。
そんな状況の中で渋谷さんは、「出来ることを一緒にやろう」と体験生に声を掛けてくれたのです。そのあとの二人は武術の時間を最後までやり切りました。
そして、次の剣術の時間は、二人とも立ち上がって最後までやり切りました。
体験生の大田さんは、朝一番で「今日は体調が悪いから家に帰ります」と言っていたのです。その太田さんが、3時間の体験授業に全て参加し、仮には「楽しかった!来週もまた来ます!」と言って帰って行きました。
先輩は、後輩がいるからこそ「手本を示せるカッコイイ先輩になりたい」というモチベーションを強く持つことが出来ます。そして、実際に「カッコイイ先輩」になれた経験を通じて、自信を深めていきます。
後輩は、「俺がやる!」「私がやる!」と先頭に立ってくれる先輩がいるからこそ、安心して後に続くことが出来ます。そしていずれ、自分が誰かの先輩になれるだけの自信をつけることが出来ます。
そんな風に「先輩力」が受け継がれていくのが、翔和学園大学部の伝統です。