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青春を謳歌することで、得られることとは?

【発達凸凹情報サイト 伊藤学園長インタビューより】

特別支援教育や福祉の世界では、高校を卒業すると企業に就職するというのが常識になっています。

企業で働けること自体はすてきなことだと思っていますが、わたしたちの一番の疑問は、
『なぜ障害者は高卒で就職しないといけないのか?』ということです。

わたしたちは18歳以上を対象にした大学部から作りました。

高校卒業後にある一定の学びの期間がある方が予後がいい、という実感があります。彼らの立場立って考えてみても、大学生活を思い切って満喫する、いわゆる時間的猶予が必要なのではないか?と思うんです。わたしたちだって、18歳の時と22歳の時はだいぶ違いましたよね。

高卒で就職することが悪いということではありません。でもそれは、本人が希望した場合であって、選択肢がそこしかないことが、非常に問題だと思っているんです。

翔和学園の場合は、青春を謳歌するというコンセプトの下、高校卒業後も学生生活を満喫します。
青春を謳歌した若者と、職業訓練だけをただ黙々と受けてきた子たちの差っていうのは、あとで大きくでるのです。

また、企業側からの視点で考えてみても、実は、同じことが言えるんです。企業が若者に何を求めているかというと、まずは、コミュニケーション能力。次に、熱意・意欲なんですよ。
作業能力やソーシャルスキルなんていう項目は、全然出てきません。

つまり、本人たちが働く現場では熱意や意欲のある若者がほしいのに、特別支援教育や福祉の世界ではソーシャルスキルを暗記させ、黙々と作業できる人材を育てているんです。この企業とのミスマッチを教育者側や福祉側がもっと気づかなきゃいけない、と思っています。

また、特別支援教育をうけて高卒から就職する場合、高校時代がほとんど就職訓練に充てられてしまう。
すると、彼らがまともに学校生活(勉強したり部活をやったり)できるのは、中学までなんですね。しかも、その中学でも、多くの場合は不適応を起こしてしまっている。

わたしは、これこそが差別ではないかと思っています。

だからわたしたちは、「大学部」という選択肢があるということを、もっと世の中に訴えていきたいんです。そして青春を謳歌した若者たちが社会にでていくと、予後がどのくらい違うのかを知ってほしいのです。

翔和学園の就職率は70パーセント近いです。東京都の福祉施設の就職率がだいたい25パーセントですから、倍以上ですね。
さらに、翔和学園の卒業生の就職したのちの3年以上の定着率が8割超えているんです。

これは、きちっと本人たちの青春を謳歌させ、生きる気力をしっかりと育てているからです。

精神科医師の本田秀夫先生は、「意欲をエネルギーにたとえると、思春期まではエネルギーを蓄える時期です。思春期に達したところで意欲のエネルギーがある一定の水準を超えていると、それ以降は、試練に直面しても、それを克服していこう意欲が自然に湧いてくるようになります」(※1)とおっしゃっています。

つまり、例えば就職した後に辛いこと・壁にぶち当たることがあったとしても、「意欲のエネルギー」を充分に蓄えている若者は、それを乗り越えることができるということです。

私たちは、本田先生がおっしゃる思春期というのは学校にいる期間のことで、いわゆる学生時代が意欲のエネルギーを貯める時期だと考えています。

そのように考えると、高校から就職訓練をしている若者と、20前後まで青春時代を謳歌している若者とでは、そもそも思春期の長さが違うのです。

また、児童精神科医の佐々木正美先生は、「子どもは子どもの要素を使い切ってからでしか、大人になってはいけないのです。」(※2)とおっしゃっています。

本人が希望しないままに高校から就職訓練をしているケースでは、子どもの要素をため込んだまま、周りが大人の要素を詰め込んで社会に押し出しているということが起こっているのだと思います。

その結果、不幸なことがいっぱい起きているじゃないですか。

しかも、悔しいことに世の中の人は、発達障害の人は事件を起こす人だと思っている。
でもそれは、実は大人の要素を無理やり詰め込まれて、外に放り出されてしまった人たちが、障害特性とは別次元のところで、起こしている犯罪なのです。

わたしは、このことをもっと世の中に訴えたいと思っています。

障害者はなぜ高卒で就職しなければならないのか?という問題提起を、もっともっといろいろなところへぶつけていきたい。と思っています。

その問題提起を正面から受け止めてくれたのが、長野県です。

2014年に、長野県から誘致をうけて、長野 翔和学園大学部ができました。長野県の発達障害をもった若者たちが、就職や大学・専門学校進学に代わる第3の選択肢として、翔和学園大学部に通っています。

もうひとつ言えば、やはり発達障害があるのだけど、ものすごく高IQの子たちが大学には相当数在籍していると思います。でも、その先がないのです。その人たちも、結局大学を卒業した後、どこにも行き場所がなくなってしまう。

そういった若者たちも何とかしていかないといけません。

受験には強いけど、それだけでは、社会にでてから辛い。発達障害の若者たちを受け入れる大学も、その若者たちが出て行く社会も、なんとかしていかないといけません。それには、高校卒業後の支援が極めて重要だと思っています。

※1
本田秀夫 2013.自閉症スペクトラム~10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体~.SB新書

※2
佐々木正美2004.いい人間関係ができる子に育てたい~友達作りの能力をのばす親の工夫~.新紀元社

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この記事は「発達凸凹情報サイト」に掲載された伊藤学園長のインタビューを転載したものです。

■発達凸凹情報サイト
https://hattatsu-dekoboko.com/

■インタビュー原文
https://hattatsu-dekoboko.com/interview/showa-gakuen

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